紙製品や印刷物を作成するときに知っておきたい紙の特徴。
その特徴の中の一つ、紙の「流れ目」についてとその見分け方を記します。
紙はパルプ繊維つまりセルロースが絡み合っており、その作り方から目、いわゆる流れ目と呼ばれるものがあります。
水に溶かしたパルプ繊維を金網ですくいあげると繊維の向きはランダムで方向性がない紙となりますが、
工業化された紙の作り方においては、エンドレスの金網の上にパルプ水溶液を流して連続製造していくので流れの方向が生じます。
例えると、早い川の流れに身を任せると体の向きは流れに平行に向くのが普通で直角には流れません。これと同じで紙の連続抄造に置いてはパルプ繊維は流れに沿って配列し易くなり、これが紙の流れ方向となるのです。
その後、作られた紙の原版から指定のサイズの紙を取っていくのですが、この時流れ方向に長辺を直角方向に取った状態の紙を縦目と呼び、T目または短辺の長さ(mm)x長辺の長さで表示します。
一方、流れ方向に短辺を直角方向に取った状態の紙は横目と呼び、Y目または長辺の長さ(mm)x短辺の長さで表示します。
見分け方
業者さんから手に入れた紙は購入時点で流れ目とサイズを指定してるので、上記の様に長短辺の識別と寸法でそれぞれの紙の流れ方向を判別することができます。それでは、手元にあるランダムな規格情報のない紙の流れ方向をどう判別はするのでしょうか?ここでは3通りの方法、紙を「垂らす」、「破る」、「浮かべる」を紹介します。
1「垂らす」
「垂らす」では、隣接する2つの辺を順番に支えて、その一方を空中に垂らし、その垂れ方を比べることによって流れ目の判定をします。垂れ方が強い方においては、支えた辺に沿った軸が流れ方向になり、一方、反対においては、支えた辺に直角になる軸が流れ方向になります。
以下2つの写真は同一の紙を使用し前述の流れに従って垂れ具合を調べたものです。左が垂れ方が強く、右のがピンと張ってほとんど垂れ込みが見られません。つまり、左の写真からは、指が支えている辺に沿った軸がこの紙の流れ目、右の写真から、は指が支えている辺に直角になる軸がこの紙の流れ目ということが判断できます。
2「破る」
3 「浮かべる」
「浮かべる」では、紙を水に浮かばせて吸水させた時の伸縮変化から流れ方向を判定します。表裏差がほとんどないコート紙でも、水に浮かべたりなどして紙の片面のみから積極的に水分を与えるとカールします。これは紙に水が入ると、水は紙を膨潤させ繊維間の結合を緩ませるので、結果水に接した紙面が伸びるからです(王子製紙2000:100f.)。そして、このカール、巻現象は紙の流れ目を軸として起こり、そこから流れ方向を我々は読み取ることができます。【流れ方向よりも交わる(横)方向の方が緩みが大きくて伸びるから流れ目が軸となる】
手順は以下の写真通りで、①紙と水を張った桶を用意、②紙をそっと水面にのせます。③最初は平ら、しかしすぐにカールを見て取れます。
この「浮かべる」方法では結果が紙の種類・規格によって大きく異なります。上記の例で使用したA2コート(104.7g)以外に他5種類の紙、上質紙(連量81.4g)、色上質(中厚)、アートポスト(209.4g)、A2マット(81.4g)、ケント(209.4g)の判別もしてみました。程度は違えど、すべての紙にカールが見られると思います。また、紙の含水率によって吸水速度が著しく変化するのもとても興味深い点です。簡単な実験ですし、実際にやって結果を観察するととても面白いのでみなさんも機会があれば是非一度試してみてください。
引用文献表
王子製紙. 紙の知識100. 東京書籍, 2000, 100p.